発達障害ハイハイの仕方の特徴|自閉症の特性&見極め方
多くの赤ちゃんは生後9~10ヶ月頃にハイハイを始めます。ハイハイの仕方には個人差があり、クスッと笑えるかわいらしいハイハイをする赤ちゃんもいます。
赤ちゃんによっては個性的なハイハイがありますが、ハイハイの仕方と発達障害には、何か関係があるのでしょうか。
赤ちゃんの発達が目まぐるしいこの時期は、周りの赤ちゃんと比較して不安になってしまう日もあるかもしれません。定型発達の赤ちゃんでも、ハイハイにバリエーションが出る場合もあります。
ハイハイの形だけで発達障害を判断しようとせず、これらの情報を参考に総合的に判断するようにしてください。
ハイハイはいつ頃始まるのか
赤ちゃんがハイハイをする時期には個人差がありますが、早い子では生後5ヶ月からハイハイがスタートします。
厚生労働省「一般調査による乳幼児の運動・言語機能について」によると、生後9~10ヶ月の赤ちゃんの90%以上がハイハイをするという調査結果があります。
赤ちゃんの月齢はあくまでも目安なので、早い・遅いという理由で心配する必要はありません。
発達障害はハイハイだけではわからない
赤ちゃんのハイハイが遅く、発達が全体的に遅いと感じていると、発達障害の可能性があるのかと心配になる方もいるかもしれません。
「発達」という言葉は共通していますが、ハイハイの時期や仕方だけでは発達障害であるかを断定できるものではありません。
発達障害であるかを見極めるには、その子どもの様子をきちんと見ていく必要があります。
発達障害のハイハイの仕方
発達障害とは、「自閉症スペクトラム」「ADHD」「学習障害(LD)」があります。
これらの発達障害を持つお子さんのハイハイに共通点はあるのでしょうか。
- ●自閉症スペクトラムのハイハイの仕方
- ●ADHDのハイハイの仕方
- ●学習障害(LD)のハイハイの仕方
自閉症スペクトラムのハイハイの仕方
定型発達のお子さんであっても、ハイハイの仕方にはバリエーションがあるものです。
ハイハイの仕方のみで過度に心配をする必要はありませんが、自閉症スペクトラムのお子さんのハイハイには、ある特徴があります。
こちらの図(作成:瀬川昌也氏)を御覧ください。
参照:厚労省「発達神経医学的にみた自閉症の予防と治療に関する研究」
最も一般的はハイハイは、図ウのように足の甲が床につく形になります。
自閉症スペクトラムやレット症候群のお子さんは、図オのように足の甲が床につかず、つま先立ちのようになるという特徴があります。
ダウン症のお子さんは、図カのように足を伸ばすハイハイをする子が多いようです。
自閉症スペクトラムを持つお子さんで、図ウの一般的なハイハイをする子は4分の1に過ぎなかったそうです。
自閉症スペクトラムであったとしても、図ウのハイハイをするお子さんもいます。
ハイハイの形だけでは、自閉症スペクトラムであると言い切れませんので、お子さんの様子をじっくりみていく必要があります。
自閉症スペクトラムの感覚過敏が理由
自閉症スペクトラムの特性のひとつに、感覚過敏があります。
図オのようなハイハイをする理由のひとつに、感覚過敏があるのではないかと考えられます。
自閉スペクト ラム症児が感覚刺激に対する過敏性を持つこと で,接地面の広い足背や足底では触覚が過敏 に働くために,その逃避反応として足趾で接地を 行ったと考える.
「発達症が疑われる 1 症例にみられたハイハイ動作の特徴について」より引用
感覚過敏とは、他の人よりも感覚が敏感になってしまう状態で、音・におい・触り心地・味などの感覚に、強く苦手を感じてしまう状態です。
ハイハイにより足背や足底が床に触れる感覚に過敏になってしまい、つま先立ちのようなハイハイをするのではないかと考えられています。
ADHDのハイハイの仕方
ADHDは、「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」とも呼ばれ、集中力がない、じっと座っていられない、という特性があります。
ADHDの場合は、特性が現れて周囲が気が付く年齢が3~5歳といわれています。そのためハイハイをする0歳の段階で、ADHDであるかを判断するのは大変困難です。
ただし、ADHDのお子さんに共通するハイハイの仕方に関する研究結果は出ておらず、ハイハイの仕方に大きな特徴はありません。
学習障害(LD)のハイハイの仕方
学習障害(LD)とは、「聞く・話す・読む・書く・計算する」といった能力に困難が生じる発達障害です。
学習障害(LD)の特性に周囲が気が付くのは、小学校入学後の7歳以降が多いです。
ADHDと同様に、ハイハイをする0歳の段階で学習障害(LD)を判断するのは困難です。
自閉症スペクトラムの見分け方
ハイハイの仕方だけでは、お子さんが自閉症スペクトラムであるとはいえません。
自閉症スペクトラムは早い段階で特性が現れてくる発達障害です。
ハイハイの仕方だけでなく、他の特徴もよく調べてみましょう。
- ●0歳~2歳の自閉症特徴
- ●3歳以降の自閉症特徴
- ●発達相談窓口や乳幼児健診で相談を
- ●発達障害の早期発見の重要性
0歳~2歳の自閉症特徴
自閉症スペクトラムのお子さんの0~2歳頃に現れる特性の例です。
- ●ほとんど泣かない
- ●目が合いにくい
- ●表情が乏しい
- ●あやしても笑わない
- ●指差した方向を見ない
- ●名前に反応しない
- ●些細な音で激しく泣く
- ●抱っこを極端に嫌がる
ハイハイの仕方にも現れていた感覚過敏は、「些細な音で激しく泣く」「抱っこを極端に嫌がる」という様子にも現れます。
「些細な音で激しく泣く」は聴覚過敏で、「抱っこを極端に嫌がる」のは触覚過敏や圧覚過敏が理由です。
0歳児はまだ動きが少ない時期ですが、表情や目線を見て、変わった様子がないか確認していきます。
3歳以降の自閉症特徴
3歳から5歳の幼児期には、自閉症スペクトラムをお持ちのお子さんはこのような特性が出てきます。
- ●1人遊びばかりしている
- ●空気が読めない
- ●冗談の意味がわからない
- ●こだわりが強い
- ●「いつもと同じ」を極端に好む
この時期に注目したいのは、他者とのコミュニケーションです。
お友達に興味はあるか、一緒に遊べているかを確認します。
また曖昧な話やたとえ話が通じませんので、冗談でいった内容の意味がわからないという場面も出てくるかもしれません。
「いつもと同じ」を好むので、いつもと違うルートを嫌ったり、幼稚園のお迎えはママじゃないと泣いてしまう、というように特性が現れるケースもあります。
発達相談窓口や乳幼児健診で相談を
「上記のような項目に当てはまる気がする」「うちの子は自閉症スペクトラムかもしれない」と感じたら、1人で悩まずに発達相談窓口や乳幼児検診で相談をしてみましょう。
相談をすると、いきなり診断されてしまうのではないか、と不安を感じている方も多いようですが、すぐに診断されるわけではありませんので安心してください。
相談をすると日常的な困り事の解決のヒントがもらえたり、少しでもママの心が軽くなるキッカケになるかもしれません。
発達障害の早期発見の重要性
「こんなに小さなうちから自閉症スペクトラムの診断を受けるべきではない」「もう少し様子をみよう」と考えるかもしれませんが、発達障害は
早期発見が重要だといわれています。
早期から適切な支援を受けておくと、自閉症スペクトラムという特性があったとしても将来は社会生活を送れるようになる人もいます。
一方で、「重度ではないから」といって支援を受けてこなかった自閉症スペクトラムの人は、軽度であっても社会生活が難しくなる人もいます。
発達障害による二次障害(チック、うつ、興奮しやすい)などが起こらないよう、早期発見し、適切な支援を受けるのがおすすめです。
定型発達の子がハイハイをしない理由
ハイハイを始める時期には個人差があり、早い子がいれば遅い子もいます。ハイハイと発達障害は直接的な関係があるとは言い切れませんので、他の問題があると考えられます。
ではなぜハイハイが遅くなってしまうのでしょうか。赤ちゃんがハイハイをしない理由を考えてみましょう。
- ●うつ伏せが苦手で筋肉不足
- ●移動の意欲が低い
- ●周囲の環境が整っていない
うつ伏せが苦手で筋肉不足
ハイハイをするには、首座り・寝返り・ずりばい・おすわり…とこれまでの赤ちゃんの運動発達が関係しています。
ハイハイをするには、うつ伏せの姿勢から首を上げ、腕の力で上半身を持ちあげられるようになっている必要があります。
うつ伏せは窒息の危険があるといわれていますので、心配になってしまうかもしれませんが、ママ・パパが見ている範囲でうつ伏せの時間を増やしてみましょう。
嫌がる時は無理にやらせず、赤ちゃんの様子を見ながら試してください。
移動の意欲が低い
ハイハイは赤ちゃんが自分の意志で移動をする手段です。
好奇心や探求心といった心の成長が追いついていないと、ハイハイをしたいと思えずになかなか動きが出てこないかもしれません。
赤ちゃんにとって心地よく五感が刺激されるような関わりを持って、意欲を伸ばしてみましょう。
大人にとって特別な何かが必要なわけではなく、「名前を呼びかける」「何かできたら褒めてあげる」という関わりから始めていきましょう。
周囲の環境が整っていない
赤ちゃんがハイハイをしたいと思える環境は整っているでしょうか。
部屋のスペースを確保して、誤飲の危険があるような物は片づけておきましょう。
0歳だと視覚も発達段階なので、見えやすい位置にお気に入りのオモチャを置いておいてあげるのも方法のひとつです。
少し頑張れば手が届く、という範囲に興味のある物を置いて、自発的に動きたくなる環境を作ってあげましょう。
シャフリングベビーと発達障害
シャフリングベビーとは、ハイハイをせずにお尻をひきずって移動する赤ちゃんです。
足を引きずってあるく、英語の「shuffle」が由来となった言葉です。
ハイハイをしないシャフリングベビーと発達障害には、何か関係があるのでしょうか。
- ●シャフリングベビーでも問題ない
- ●低緊張の赤ちゃんとは
- ●低緊張と発達障害
シャフリングベビーでも問題ない
シャフリングベビーであってもその後問題なく成長していくお子さんはたくさんいますので、シャフリングベビーだからといって必ず問題があるというわけではありません。
シャフリングをしてからハイハイをする赤ちゃんもいますし、シャフリングからそのままつかまり立ちをする赤ちゃんもいます。
ハイハイをしなくても問題はありませんが、ハイハイをさせたいと考えるママ・パパもいるかもしれません。
その場合は、うつ伏せや四つ這いの姿勢といった、自分の体重を支える練習をしてみましょう。
低緊張の赤ちゃんとは
シャフリングベビーであっても、多くの場合は心配ありません。
しかしごく稀に発達障害や神経疾患がシャフリングの理由になっているケースもあります。
- 1.ミルクの飲みが悪い
- 2.泣き方が弱い
- 3.首のすわりが悪くグラグラしている
- 4.指先の発達が遅い
これらの4つの点に当てはまるようであれば
「低緊張」の可能性があります。低緊張とは、自分の体を支える筋肉の張りが弱い状態です。
良性筋緊張低下症で発達とともに改善されるケースと、障害や疾患が原因のケースがあります。
ダウン症や筋ジストロフィーのお子さんは、低緊張のため発達がゆっくりになります。
低緊張と発達障害
低緊張もあり、シャフリングをするという赤ちゃんは、今後これらの項目にも注目していきましょう。
- ●言葉の理解が遅くないか
- ●手指の発達が遅くないか
- ●表情の発達が乏しくないか
もしかしたら脳性まひや自閉症スペクトラムといった発達障害が関係しているかもしれません。
発達障害は総合的に判断を
ハイハイの仕方だけで発達障害かを判断できるものではありませんが、自閉症スペクトラムをお持ちのお子さんのハイハイには特徴があるとわかりました。
不安な点があれば、地域の相談窓口に問い合わせてもいいですし、乳幼児健診で相談してみてもいいでしょう。
考えすぎているだけというケースも多いので、1人で抱え込んで判断しようとせずに、プロの意見を聞いてみるといいでしょう。
この記事を書いた人
メルシーママン編集部
育児に関するお役立ち情報やママさんたちが感じているお悩みを解決できるような情報を発信します!